閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

殯の森

http://www.mogarinomori.com/

カンヌ映画祭のオフィシャル・ページにあった梗概、インタビュー抜粋記事は読んでいて、作品の雰囲気は大まかに把握していた。監督インタビューでは、特に変わったことを言っていたわけではないが、わざとらしい謙遜や社交辞令のない素直な回答ぶりには、ちょっと感心した。
作品自体は、山村の茶畑(?)、田圃、森の鮮やかな緑の景色が映像が印象的ではあったものの、話の展開や演技演出などことごとく「いかにも」って感じの定型的パターンをなぞっているようで、興ざめしてまう。ひたすらたるいリズムで作られた娯楽作品という感じ。
痴呆老人とのかかわりについてのある種の理想的なかたちを美しく描いた作品であるが、そのイメージはいかにも頭の中だけで作り上げられた人工的なおとぎ話に思え、リアリティに乏しい。 現代日本における老人介護については痛ましく、希望の持てないような話ばかりなので、こういった美しい物語もあってもよいかもしれないけれど、実際に老人介護で「格闘」している人たちはこの作品に果たして共感できるのだろうか、などと考えてしまった。

ドラマの作りがあまりにも定型的で、しかもキレイすぎるような気がした。 茶畑(?)できゃっきゃと戯れているうちに心が通じ合うとか、彷徨中に突然大雨が降ってきて「きゃぁいかないで」とお姉さんが泣き叫んでいると、どわーっと鉄砲水がおそってくるシーンとか、雨に打たれて突然ぶるぶると震え始めた老人を若いお姉さんが裸になって抱きしめて暖めるとか、遺品のオルゴールのセンチメンタルな音色を聞きつつ、お姉さんがぼーっと放心したように上のほうを見ているシーンとか。

互いに愛しき存在を喪失したことで共感しあえたという、二人の結びつき方もあの物語の作り方では、僕にはいかにもとってつけたもののように思た
こういった安らかな痴呆と老への向き合い方もあり得るのかもしれないのだけれど。