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流山児★事務所
- 作:福田善之(作者自身による2007年改訂版)
- 企画:観世栄夫
- 演出:流山児祥
- 音楽:本田実
- 美術:水谷雄司
- 音響:島猛
- 照明:沖野隆一
- 振付:北村真実
- 殺陣:岡本隆
- 映像:濱島将裕
- 衣裳:大野典子
- 舞台監督:吉本均
- 出演:河原崎國太郎、町田マリー、さとうこうじ、塩野谷正幸、伊藤弘子、栗原茂、保村大和
- 上演時間:2時間25分
- 劇場:森下 ベニサン・ピット
- 評価:☆☆☆★
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福田善之が1963年に発表した戯曲の改訂版の上演。川上音次郎一座をモデルとする歴史群像劇。
前進座の立女形の河原崎國太郎と毛皮族の看板女優、町田マリーが共演するという異色のキャスティングに惹かれ、チケットを購入した。どちらも「贔屓」といっていい、好きな役者である。
多数の壮士たちが暴れ回る群像劇で、特にオープニングとエンディングの群唱、群舞の迫力はたいしたものだった。明治初期の芝居小屋内部をモチーフとするベニサンの空間を広く使った美術も素晴らしい。背景の変化で手前側が舞台裏の楽屋になったり、升席の客席になったりする。劇場には花道もしつらえてある。映像も効果的に用い、「オッペケペ節」の歌詞などが舞台美術上に投影される。
ずいぶん盛り沢山な内容の充実した戯曲だった。自由民権思想の喧伝手段として壮士芝居を作り上げ、権力に負けぬしたたかさとねばり強さを見せる國太郎演じる主人公城山が、徐々に芝居の魅力、そして興行の魅力に取り込まれ、政治的な妥協を行うようになるというのが大きな筋の流れ。そこに城山に憧れて一座に加わった士族、愛甲の不倫の愛と理想の挫折の物語がからむ。さらにこの芝居の作者が、今進行している芝居について解説するという外枠が加わる。ただしこのメタ演劇的仕掛けは、全くうまく機能していなかった。
殺陣や群舞・群唱(これが「オッペケペ」の要となるのは確かだが)の構成に気を取られすぎたためか、各登場人物の掘り下げは今ひとつ物足りない。國太郎を含め、役者自身が自分の役柄について戸惑っている感じがした。國太郎は前進座代表として、圧倒的な芸の力で、もっと存在感を示して欲しかったのだが。2時間半弱ノンストップも劇の動きを止めないことに神経が行きすぎているような気がしてかえって全体のリズムが間延びしてしまった。
最前列からの鑑賞だったが、町田マリーは間近で見ると本当に可愛らしく魅力的だ。ただしこの芝居では、歴史劇の雰囲気と彼女のちょっとbitchな雰囲気がうまくかみ合っているようにみえず、台詞も空回りしているように思えた。
戯曲の重厚な魅力は伝わってくる舞台であったが、今日、明日はプレビュー公演とはいえ完成度は今ひとつ。