閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

中村梅雀の前進座退団

http://www.asahi.com/culture/stage/kabuki/TKY200709120072.html

前進座第三世代の中で圧倒的に華があり、今後の前進座を支えるはずだった人材が、座を退団してしまった。
確かに中村梅雀くらい器用でしかも才能ある人間にとって、今の前進座の存在は重荷でしかなかったかもしれない。
ほとんど空気のような存在であったはずの前進座から敢えて脱退するには、彼自身も大いに苦悩したはずだ。祖父は座の創立者の一人、そして父は座の代表なのだ。
それでも抜ける、という決断をした。座を捨てる決心をした。そしてこれはほとんど彼にとって歌舞伎を捨てることも意味するのではないだろうか。いや歌舞伎だけではない、父をはじめとする肉親たち、そして座の盟友たち、これまで前進座を支えてきた先達たちを捨てることなのだ。齢五〇にして彼は新しい存在として生まれ変わる決意をしたのだ。役者として前進座という殻から抜け出すことでもっと大きく成長したいという思いの強烈さを想像すると、彼の行動はどうして非難できようか。重い決断の末、独立の道を選んだ中村梅雀が今後さらに大きな存在になっていくことを期待したい。

しかしこれで前進座は確実に危機に陥った。残った面々で今後どこまで座を支え続けていけるのか、彼らの奮起が僕が好きな前進座舞台の再興をもたらすことを期待したい。頑張れ、前進座