閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

夏祭浪花鑑(1745年)

http://www.ntj.jac.go.jp/performance/1406.html

三段目「住吉鳥居前
四段目「内本町道具屋」
五段目「道行妹背の走書」
六段目「釣船三婦内」
七段目「長町裏」
八段目「田島町団七内」

  • 作:並木千柳、三好松洛、竹田小出雲
  • 上演時間:4時間30分(休憩10分、25分、10分)
  • 評価:☆☆☆☆
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「鳥居前」「三婦内」「長町裏」は昨年五月に、吉右衛門らによる新橋演舞場での公演でこの見たことがあった。昨年見た歌舞伎版では上演されなかった三段目「道具屋」と四段目「道行」が面白い。道具屋で清七という名で手代となった磯之丞だが、町人生活の中でもぼんぼん気質は抜けきっていない。主人の娘と恋仲になった上、狡猾な番頭の策略にまんまと引っかかり金を騙し取られてしまう。
ただし三,四段目は「だますものがだまされる」というどんでん返しの展開で、最後には悪人どもはその悪巧みの報いとして間抜けな死に様をさらすことになる。この悪役の死に様を喜劇的に描くという容赦なさがとてもいい。
「三婦内」の見所は徳兵衛の妻のお辰が鉄弓で顔を焼くというショッキングなシーンだが、これは歌舞伎で人間が演じたほうが効果的だ。「長町裏」の凄惨な殺しの場面と祭囃子という強烈な明暗のコントラストは、しびれるほどかっこいいアイデアだと思う。この場面のどちらかというと歌舞伎でやったほうが迫力があっていいように思ったが。
「団七内」の段は今日の公演の構成だと、若干蛇足感もあり。屋根上の立ち回りで終わるという最後は、いかにも歌舞伎的でいいのだけれど、大詰にもってくるにはその前が長すぎるように僕には思えた。

登場人物の性格の魅力、起伏のあるドラマの面白さ、演出の工夫など、やはり傑作とされる作品だけあって実によくできている。最後のほうは退屈して眠くなってしまったところもあったが、全般的に楽しんで見ることができた。

人形浄瑠璃について技術的なことはまったくわからないのだけれど、人間が演じることで必然的に生じる雑味がない分、歌舞伎に比べるとドラマの展開の面白さに集中できる感じがする。大夫、三味線奏者ともきりっとしたハンサムな人が多いなぁとプログラムの写真を見て思う。