http://www.owlspot.jp/performance/080126.html
- 作 :アントン・チェーホフ
- 英訳:マイケル・フレイン
- 翻訳:小田島恒志
- 演出:山崎清介
- 照明:山口暁
- 音響:角張正雄
- 美術:松岡泉
- 衣裳:三大寺志保美
- 舞台監督:堀吉行
- 出演:伊沢磨紀 佐藤 誓 山口雅義 戸谷昌弘 三咲順子 山田ひとみ
- 演目:『ドラマ』『外国もの』『たばこの害悪について』『白鳥の歌』『熊』『プロポーズ』
- 劇場:東池袋 あうるすぽっと
- 上演時間:二時間二十分
- 満足度:☆☆☆★
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昨秋オープンした新しい劇場、あうるすぽっとに行くのは今回がはじめて。がらんとした東池袋に唐突といった感じでそびえる新しいビルの二階。ビル自体もがらんどうといった感じで特に一階には何もない。劇場入り口がある二階もがらーんと広い。略奪された後の教皇庁廃虚といった雰囲気である。客席は300席ほどらしいが、今日の公演はかなり空席があった。あうるすぽっとは豊島区立舞台芸術交流センターという名前も持っているけれど、箱を作るにあたってそこでやる芝居興行についてはどんなものを想定していたのだろうか。
公演はチェーホフの一幕ものの作品(チェーホフが「ボードビル」と呼んでいたのはこの種の作品のことか?)、六作品をオムニバス形式で構成した舞台だった。翻案は英国の劇作家マイケル・フレインである。劇は劇中劇の形態をとり、三重構造となっていた。一番外側の枠組みは旅芸人の一座。一座はとある地方の居酒屋にやってきてその簡素な舞台で公演準備をはじめる。二番目の枠組みの劇中劇は、六人の役者たちがひとつの家族の姿を演じるというもの。舞台上におかれたダイニングテーブルが第二の枠組みの中心となる。さらにその家族劇の延長線上で、チェーホフの一幕劇の上演につながっていく。家族劇の家族の役割が一幕劇の中の役柄とゆるやかに重ねられていく。
シンプルな舞台装置の中、衣裳の早替りを効果的につかったテンポのよい展開が心地よい。各幕のスムーズな連係のさせかたもスマートでかっこいい。しかし極めて洒落た趣味のよい舞台ながら、表現があまりにも抑制されすぎた印象があり。黒幕背景のがらんとした舞台の見た目との相乗効果もあってずいぶん寂しい印象の芝居になってしまった。六つの演目の中では最初に演じられた『ドラマ』が僕には一番面白かった。劇作家のもとにおしかけた中年女性が無理矢理に自作の芝居を読み聞かせる話である。ラストでは叙情的な余韻もある。第二作目の執拗な外国人いじめの不条理劇、『外国もの』も楽しめた。
しかしそれに続く『たばこの害悪について』、『白鳥の歌』が陰鬱すぎる。『熊』、『プロポーズ』の二本のファルスは翻訳テクストを読んだときは、シニカルながら陽性の雰囲気が大変気に入った作品だったのだけれども、今日の上演ではテクストを読んだときに感じたリズム、のりの良さを楽しむことは僕はできなかった。
おそらくフレインの創案による外枠構造はきっちりとしたまとまりを作品全体に与えていたけれど、昨年岸田国士作品でケラがやったような、古典に新しい魅力を吹き込むような実験性やダイナミズムには乏しかったように思う。
洗練された洒落た舞台ながら、ちょっと期待外れ。マイケル・フレイン翻案-山崎清介演出という組合せゆえに期待が大きかったのだけど。今回に関してはマイケル・フレインの翻案を間にはさまず、むしろ山崎が直接チェーホフの原作をいじったほうがうまくいったような気もする。