- 作者: 喜志哲雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: 新書
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評価:☆☆☆☆★
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シェイクスピア作品には,観客と登場人物の情報量に意図的に差をつけることで劇的効果を作り出す演劇的アイロニーの技法が多用されている.この著作では,この劇作術に主に着目して,「第一章:結末が分っている劇はどこが面白いか」「第二章:喜劇の観客は何を笑うか」「第三章:悲劇の主人公はなぜすぐに登場しないか」「第四章:不快な材料はどう処理されるか」「第五章:超自然的な存在はどんな役割を演じるか」の五つの観点から,24作品を分析する.著者によれば,シェイクスピア劇の特徴として,観客が登場人物に安易に感情移入することを許さない仕掛けが巧みに施されたブレヒト的叙事詩劇の側面があると言う.著者の分析と解釈には多少アクロバティックで強引に感じられるところもあるけれども,研究者的ジャーゴンを使用しない平易な分かりやすい表現でシェイクスピアの劇作術の特徴が解説されている好著.著者の決めぜりふは「救いようもないほど浅薄な誤解を犯している」なのだけれど,著者の提示する視点は,僕が今まで気づかなかったシェイクスピア作品のしかけの素晴らしさ,その劇的効果の意味を明らかにしてくれるものだった.