サスペンデッズ vol.6
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シアタートラムによる若手演劇人の紹介プログラム。
早船聡はこれが二作品目昨年六月に新国立で見た『鳥瞰図』(演出は松本佑子。山本周五郎の『青べか物語』に影響されて生れた作品だという)にも感心したが、今回の公演もとても面白かった。早船聡は37だという年齢にしては驚くほど円熟した雰囲気のある完成度の高い戯曲を書くひとだ。
オーソドックスな家族劇である。作品設定は『鳥瞰図』と少し似ているところがあった。親子、姉弟という家族関係にある微妙な心理の揺れが丁寧に表現されている。
描かれる日常風景は平凡ではあるが、そこに登場する家族にはうしろぐらい欠損がある。登場人物はそれゆえそれぞれ心の奥にかすかな傷を持っている。この傷が登場人物の造型に深みを与え、ドラマの展開に奥行きをあたえる。
コミカルな台詞のやりとりの作り方、喜劇的な場面の入れ方もとてもよく計算されていて上手い。役者の演技もニュアンスに富む丁寧なものだった。インドネシアに数年の予定で赴任する義兄が、インドネシアへの同行を主人公の姉に対し懇願する場面の台詞、「おねがいだからいっしょにいってくれよ。おれはお前なしではだめなんだよ。きれいな海のあそこで、皮膚が黄色くなってしまうぐらいべろんべろんにおまえとセックスしたいんだよ」というのがなぜか印象に残る。ああ、わかるなぁって感じで。
バランスよくまとまった1時間40分。「あー、いい芝居を見たなぁ」と思わず終演後に口から出てしまいそうになるような充実した芝居だった。