閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ヘンリー六世 第一部 百年戦争

http://www.atre.jp/henry/

しばしば上演される『リチャード三世』の前段にあたる『ヘンリー六世』三部作を僕は舞台で見るのはこれが初めてだった。戯曲も読んだことはない。
この大作を見る機会はそうそうないので上演を楽しみにしていた。

大陸の領土の継承をめぐって英仏が争った百年戦争の末期が舞台。フランスにとっての救国の英雄、ジャンヌ・ダルクも登場する。
広々とした中劇場の舞台の横と奥行きを覆う舞台美術がかっこいい。一面、灰色の荒廃した泥地のような地面が広がっている。後方はかなりの傾斜で上方に伸びている。右手前には水を張った池が作られている。左手前にはゴミの残骸のようなものが乱雑に置かれている。照明の効果によって、この暗い灰色の大地が様々な場所へと変貌していく。

場面展開のテンポが早くて、思っていたほど退屈しない。主要な人物関係もそれほど混乱無く頭に入ってきた。

大きくイングランド宮廷での内紛の場面と大陸フランスでの戦闘の場面が交互に展開していく。イングランド宮廷の場面は議論が多くて若干単調。何回か落ちた。大陸の場面は活劇風である。フランスのジャンヌ・ダルクとイングランドの将軍トールボットが芝居の核となる。トールボットを演じた木場勝己がかっこいい。ジャンヌを演じたソニンがとてもよくて木場の芝居に十分対抗できていた。彼女なりにジャンヌの役柄をしっかり構築して、自信をもって堂々と演じていたように見えた。発声もしっかりしていて台詞の通りもいい。

来週第二部、再来週第三部を見る。壮大なスケールの歴史活劇、思った以上に楽しめそうな感じがした。

二階席で見た。新国立中劇場で二階席が満席というのは滅多にないのではないだろうか。3000円弱でこんなに充実した歴史スペクタクルを味わえるのだから、かなり割安だ。