Op辿ra national de Paris - Faust
- 作曲:Philippe Fénelon
- 指揮:Bernhard Kontarsky
- 演奏:Orchestre et chœur de l'Opéra national de Paris
- 演出、美術、衣裳、照明:Pet Halmen
- 照明:Tobias Loeffler
- 振付:Luca Masala
- 合唱指揮:Patrick Marie Aubert
- 出演:Gilles Ragon, Arnold Bezuyen, Robert Bork, Gregory Reinhard, Bartlommiej Misiuda, Eric Huchet
- 評価:☆☆
- チケット代:116 ユーロ
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パリ滞在最後の夜のスペクタクルは、ガルニエ宮でのオペラ《ファウスト》だった。
フランス・オペラで《ファウスト》と言うとグノーの作品が思い浮かぶが、今回上演されるのはフィリップ・フェヌロンという現代作曲家の新作である。基になっているテクストもゲーテの『ファウスト』ではなく、十九世紀前半、ルーマニア出身のドイツ語圏作家ニコラウス・レナウの作品だとのこと。
私にとっては全く未知の作品の上演なのだが、これまで見てきたパリ・オペラ座制作の現代オペラには外れがほとんどない。斬新な演出で大きな驚きと感動をもたらしてくれるものが多かったので、今回の上演も大いに期待していた。17日はこの公演の初日にあたり、日本からネットでチケットを予約しようとしたのだがすぐに売り切れてしまっていたのだが、こちらに滞在中にキャンセルで空き席が出た。当日券に並ぶつもりだったのでありがたかった。
上演時間は休憩三十分を挟み二時間三十分。ゲーテの《ファウスト》よりかなり象徴・神秘的な内容で、独立性の高い10のエピソードが並列されているという感じだった。言語はドイツ語でフランス語の字幕が出る。
プログラムに掲載されている舞台美術の写真を見て悪い予感がした。近年のフランスの舞台芸術は少なくとも視覚面の洗練は相当レベルが高いのだが、そうした洗練が感じられないのだ。実際の舞台美術は写真で見た印象以上にかっこわるいものだった。緞帳が上がってがっくりする。二メートルぐらいのしゃれこうべがあってその上に人が乗っているのだけれど、そのしゃれこうべが公園にある子供の遊具みたいにちゃちなのだ。このしゃれこうべ以外にも馬とか犬とかいろいろ出てくるのだがことごとくぱっとしない。上に人が立っていられるように頭頂部が平らになっているしゃれこうべがなんか間抜けだ。
そして音楽。無調でだらだらしてめりはりのないBGM風のオケをバックに、お経のようなもごもごとしたレチタティーヴォが延々と続く。いやこんなもんがパリのオペラ座にかかるとは。なんて田舎くさい前衛だろう。いや前衛的表現への意気込みさえ感じられない。旧時代オペラ美学を現代音楽でなぞって劣化させた作品だ。高いチケット代を払ったのにまさかこれほどまでにつまらない作品を、パリ・オペラ座で見させられるとは思ってもいなかったのでショックだった。
二幕は見ないで幕間に劇場を出てしまった。劇場を出るとお腹の調子が急激に悪くなった。帰りのバスでは脂汗を流して耐える羽目に。うーむ。