閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

奇跡の丘 (1964)

IL VANGELO SECONDO MATTEO

この作品でのイエスの描かれ方に、ロッセリーニが13世紀のイタリアの聖人、聖フランチェスコの生涯を描いた作品、『神の道化師』を連想する。音楽の頻繁な使用を少々うるさく感じたが、全体的には過剰な演出を廃し、「マタイによる福音書」の記述をもとに一宗教実践者であり革命家であったイエスの姿をリアルに描き出す。
ローマのティベリウス帝の時代、帝国の辺境で罪なき聖人の上に起こったありふれた悲劇としてイエスの受難と奇跡を描き出しているように思える。しかしこの悲劇を発端に、イエスの教えが2000年以上にわたって世界規模にわたって広がりを持つことを、当時の人間の誰が予想しえたであろうか。ペテロの否認、ユダの裏切り、イエスの使徒の人間的な弱さを描いた場面がこの作品のクライマックスであるように思った。最後の復活の場面があっさりしていたことには拍子抜けした。
短い場面だったけれど、細身の美少女であるサロメがよかった。あどけなくて可愛らしいけれど、残酷。