閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

神曲─煉獄篇 Purgatorio

ロメオ・カステルッチ/ソチエタス・ラファエロ・サンツィオ Societas Raffaello Sanzio
http://festival-tokyo.jp/program/purgatorio/index.html

  • 作:ロメオ・カステルッチ
  • 演出/舞台美術/照明/衣装:ロメオ・カステルッチ
  • 音楽:スコット・ギボンズ
  • 振付:シンディ・ファン・アッカー、ロメオ・カステルッチ
  • 舞台美術協力:ジャコモ・ストラーダ
  • 美術/機械/人工装具:イストヴァン・ジッメルマン、ジョヴァンナ・アモローゾ
  • 出演

第一星: イレーナ・ラドマノヴィッチ
第ニ星: ピエル・パオロ・ジッメルマン
第三星: セルジョ・スカルラテッラ
第三星?: ユリ・ロヴェラート
第ニ星?: ダヴィデ・サヴォラーニ

天国を抜けた後で、煉獄を見に行った。
前から2列目中央といういい席だった。ただもうちょっと高い位置から見た方がよかったかもしれない。床がどうなっているか見えなかた。
ブルジョワの家庭の夕暮れから夜にかけての時間が、紗幕越しに静かに淡々と演じられる。母と息子とそしておそらく父親。紗幕に映し出された字幕では、彼らはなぜか第一星、第二星、第三星という名称で示される。間接照明の暗いなかでの陰気な夕べ。場面はダイニングキッチン→子供部屋→居間と移動する。眠りに落ちそうになるのをこらえて何とか最後まで覚醒状態で見れた。
男による児童(性的?)虐待が別室で行われて、あとはダイナミックに表現が反転。舞台中央の円形のスクリーン越しに巨大な植物のパレードみたいなもんが流れ、それがおわるとやはり舞台中央の円形ガラスでは黒い墨みたいなもんが模様を描きながら回転している。その向こう側では身体障害者の中年男性が若者にいたぶられ痙攣しながらダンスをおどったり、今度は若者がのたうちまわったり。この二人の男性は前の場面の父親と息子のその後の姿らしい。

造形美術的なセンスは極めて洗練されていてとにかく見た目がかっこいい舞台だ。シャープで美しい舞台画には惹きつけられる。しかし表現に生々しさが乏しくて、人工的でそらぞらしい感じもした。ある種の観客層の反応をいかにも狙ったあざとさ、計算を感じて、私の趣味の周波数からはちょっと外れていた舞台だった。こういった作品を「神曲三部作」と名付けて放り出すという戦略性にもちょっとずるさを感じる。 カステルッチの『神曲三部作』と私の相性は今ひとつかみ合わないところがあった。若いときに、海外の芸術祭などでこういった作品を見ればもっと深く入り込めたような気もする。