閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

リア王

劇団美醜
プログラム詳細|第17回 BeSeTo演劇祭

  • 原作:シェイクスピア
  • 演出:イ・ビョンフン
  • 出演:劇団美醜(ミチュウ)
  • 上演時間:140分
  • 劇場:初台 新国立劇場中劇場
  • 評価:☆☆☆☆★
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シェイクスピア悲劇に相応しい風格とスケール感を備えた堂々たる『リア王』の舞台だった。テクストの丁寧な読解に基づき誠実に舞台作品を立ち上げた感じがした。前半部のもたつきに若干眠たくなってしまう時間もあったが、これもちょっと考えてみればシェイクスピア劇ならではという気がする。後半、救いのない悲壮な場面が重なっていくにつれて舞台に引き込まれていった。本格的なシェイクスピア悲劇の上演に立ち会ったという大きな充実感を得ることのできた舞台だった。

音楽は打楽器を中心とするアンサンブルとコーラスで生演奏だった。音楽の入りが若干うるさすぎるような感じがした。役者たちの感情表現は韓国俳優ならではの暑苦しさがある。舞台美術は古びた麻布で作らた巨大な簾が垂れ下がっているだけのシンプルな簡素なものだったが、セピア色を基調とする照明の変化や中劇場の奥行きの深さをうまく利用して、変幻自在の空間を出現させていた。役者の移動などもしっかりと計算されているからこそ、あのシンプルな美術で空疎さを感じさせない舞台空間を作り上げることができたのだろう。

美術の雰囲気や役者の演技演出、展開のスピード感には蜷川幸雄シェイクスピア舞台と似たような雰囲気も感じた。
韓国演劇界の層の厚さを感じさせる舞台だった。知らない役者ばかりだから集客に難があるのは仕方ないとはいえ、招待客だらけの客席なのがちょっと寂しい。17回もやっている割にはBeSeTo演劇祭の認知度は低いような気がする。内容はとても充実しているし、値段も安いのに。客の入りに近隣のアジアの文化に対する我々の関心の薄さが反映されている。