- 作:潘軍
- 演出:王暁鷹
- 作曲:張広天
- 翻訳:飯塚容
- 出演:中国国家話劇院
- 劇場:こまばアゴラ劇場
- 評価:☆☆☆☆★
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司馬遷の『史記』などで知られる項羽と虞姫の悲劇を扱う。京劇風の様式を取り入れた芝居だが、古典ではなく新しく書かれた戯曲。項羽の語りを軸に展開し、項羽は時折現代の観客である我々に語りかける。役者は四人だが項羽の台詞量が圧倒に多い。
筋と演出は一見古風で典雅だが、展開はよく整理されていてスピード感があるし象徴的な洗練された表現を使っている。パンフレットの記述によると中央国家話劇院は古典から前衛まで幅広い作品を上演するそうだが、この作品では伝統演劇の様式感がうまく取り入れられていた。語りによって主に再現される叙事詩的な枠組みと歌と舞踊を効果的に使った叙情的な場面が効果的に組み合わされていた。
項羽と劉邦が語りを主に担当する。虞姫は歌と踊りを交えた叙情的な場面を作り出す。もう一人の役者は項羽の腹心である范増ほか数人を変幻自在に演じ分け、見事なアクロバットも見せる。
前半は「うーん、よくできてるけれど、こういう話、あんまり興味ないんだよな」という感じで見ていたのだけれど、四人の役者の技芸の多彩さと鮮やかさに引き込まれ、後半は劇世界に没入することができた。眠ってしまったけれど一昨日の川劇の役者といい、今日の役者といい、中国俳優の表現能力の素晴らしさは素人目にもとても印象的だ。