- 出演:紫竹あかね(ボーカル)、酒井康志(作曲、ピアノ、パーカッション他)、西としひで(パーカッション)、松為伸夫(ベース他)、神蔵治(ギター、フルート)、鈴木光介(トランペット他)、高野竜(作詞)
- 会場:中野坂上RAFT
- 時間:2時間半(休憩15分)
- 評価:☆☆☆☆★
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昨年「アラル海鳥瞰図」という戯曲で第1回宇野重吉演劇賞を受賞した高野竜氏が作詞を担当するバンドのライブに娘と一緒に行った。
バンドの演奏メンバーは女性ボーカル、ピアノ他、パーカッション、ベース、ギター、トランペット他の6名。歌詞担当の高野氏を含めると7名。昨日と今日で60曲、すべて異なる曲を演奏するという。完全アコースティックでボーカルもマイクを使わない。二日目の今日はのどの負担が大きかったせいか高音は出にくそうだった。FOMALHAUTの音楽はフライヤーには「風景について歌うポップス・バンド」とある。変拍子も使用したうねうねとした曲が多いが、メロディは童謡風でもありおおむね親しみやすいものだった。今回はアコースティック・ライブだったためかもしれないが、ナチュラルで牧歌風の音楽に感じられた。「子連れ歓迎」ライブとあって、私と娘以外にも何組か子連れで来ている観客がいた。観客は全員で30人ほどか。
作曲担当の酒井康志氏がまず音楽を作り、それを作詞担当の高野竜氏が聞いて詞をつけるのが基本的な順番だと言う。ことばに無理をさせない音楽だなと思いながら聞いていた。高野氏のことばは詩情豊かでときに難解な語句や言い回しが含まれている。にもかかわらずことばが音として、こちらの神経をいらつかせずにやわらかく響く。そのことばの自然で心地よい乗り方にフランスのキャバレー歌、プーランクの歌曲、あるいはそこに含まれている諧謔の味わいにエリック・サティを私は何となく連想した。
田園牧歌風ではあるがその心地よさがこちらを別の世界に「トリップ」させる麻薬的な音楽でもあった。最初はことばのイメージを音楽のなかで味わおうとことばの意味を追っていたのだけれど、だんだんことばは音像のなかに溶け込んでしまった。前半でもぞもぞと動きながらも音楽を聴いていた3歳ぐらいの女の子が、後半になると疲れてしまって母親にだっこされながら眠っていた。柔らかく暖かい音楽を聴きながら、女の子が母親にしがみつきながら眠っている様子を見ているうちに、「何かいいなあ」とじわじわとした幸福感を覚える。そして「自分は何と贅沢な日曜の午後を過ごしているのだろう」と思う。娘もぼんやりとしながらも音楽を彼女なりに楽しんでいたようだった。
バンド名のFOMALHAUTの意味を家に帰ってから調べてみた。「フォマルハウト」と読むようだ。「南魚座のα星、秋の一つ星」のことらしい。平凡社の『世界大百科事典』には以下の記述があった。かっこいいバンド名だ。
「みなみのうお座の α 星。アラビア名フンム・アルフート(魚の口)に由来する。みずがめ座の水がめから流れ落ちた水がこの魚の口に注がれている。中国名は北落帥門。秋の寂しさを象徴するかのごとく南の空にぽつんと光る1等星である。他に明るい星がないので注目されたはずだが,和名は広まっていない。[…]半径は太陽の1.6 倍。距離は22光年。」