閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ペン

劇団NLT
劇団NLT公式サイト

  • 作:ピエール・バリエ ジャン・ピエール・グレディ 
  • 翻訳:住田未歩
  • ドラマトゥルク:佐藤康
  • 演出:釜紹人
  • 出演:井上純一木村有里、泉関奈津子、霜山多加志、松村良太、永井美羽、桑原一明、川崎敬一郎、早稲田真樹
  • 劇場:六本木 俳優座劇場
  • 上演時間:2時間半(休憩15分)
  • 評価:☆☆☆☆
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1955年の作品。作者はPierre BarilletとJean-Pierre Grédy。フランスのブルヴァール劇と呼ばれる大衆喜劇の劇作家である。日本でいえば松竹新喜劇みたいなものだろうか。多くはブルジョワの家庭が舞台の肩の凝らない軽妙な喜劇作品。

『ペン』の舞台は地方の古典語教師の家。彼は作家を夢見て出版社に原稿を長年送り続けているが、才能に乏しく出版社には黙殺されている。彼には 16歳の娘がいる。その娘が書いた小説が出版社に認められ文学賞を受賞する。世間は16歳の若い作家に注目する。父親は娘を誇りに思う一方、嫉妬の感情にも苦しめられる。

結末の大団円には物足りなさを感じたが、各人物の性格付けがしっかりされている面白い芝居だった。登場人物が皆俗物根性丸出しなのがいい。娘も文学賞受賞と世間の注目に浮かれて驕慢になる。才能に乏しい父親に対するあてこすりも言ったりする。父は娘の成功に鼻高々ではあるが、父親としての威厳と愛情、娘の成功への嫉妬の間でゆれ動く。NLTの芝居は定型的な喜劇演技だが、今回は記号的表現も抑制され、わざとらしい大げささで笑いを露骨にとりにいっていないところがよかった。台詞のリズムもいい。いかにも手慣れた感じでこの種の喜劇のお手本のような舞台だった。