閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

タイタス・アンドロニカス

山の手事情社

  • 構成・演出:安田雅弘
  • 原作:シェイクスピア
  • 美術・照明:関口裕二
  • 音響:斎見浩平
  • 衣裳:竹内陽子
  • 出演:水寄真弓、山田宏平、野々下孝、倉品淳子、山本芳郎、斉木和洋、岩淵吉能、植田麻里絵、浦弘毅、川村岳、三井穂高、浦浜亜由子、文秉泰、山口笑美、園田恵、石原石子、越谷真美、谷洋介
  • 劇場:浅草 アサヒ・アートスクエア
  • 評価:☆☆☆☆★
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最後のスプラッタ・ホラーの場面の迫力は圧巻だった。狂気の発作、集団ヒステリーの状態になったように、ばたばたと人が殺され、死体が舞台上に積み上がる。

喪服姿の老女が正座をしながらタイタスの悲劇を語るという趣向。役者たちは調子の狂ったぜんまい人形のような動きで演じる。タイタスの側は白、タモーラ、アーロンらの悪役は黒、サターナイナスらローマ皇帝は金の衣裳を身につける。ローマ皇帝の妻となったゴートの女王、タモーラは黒の衣服の上に薄手の金の着物を羽織る。邪悪の権化であるアーロンは道化/悪魔で、他の人物たちとは浮き上がった異質の存在感があった。舞台で表現されているあの容赦ない暴力性に戦慄した。まさにあれこそ「タイタス」という感じが私にはした。山本芳郎の演じたアーロンの得体のしれなさは人間の抱えうる悪意の闇の深さそのものの寓意であるように思えた。

解釈は図式的で、表現は記号的だが密度が高くてどっしりとした重量感がある。視覚的なインバクトは強烈だ。でも眠くなる。あの台詞回しの調子が私の眠り周波数と同調しているからだろうか。台詞自体はよく聞こえるし、わかりやすい。でも長唄や謡曲、中華音楽を聴いているときと同じように、眠りに誘われる。