- 原作:ウィリアム・シェイクスピア
- 構成・演出:安田雅弘
- 照明・舞台美術:関口裕二(balance,inc.)
- 音響:斎見浩平
- 衣装:綾
- 舞台監督:本弘
- 出演:山本芳郎、弘毅、倉品淳子、山口笑美、大久保美智子、川村岳、岩淵吉能、斉木和洋 他
- 劇場:池袋 東京芸術劇場 シアターウェスト
- 評価:☆☆☆
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上演演目はシェクスピアの『トロイラスとクレシダ』は、8月に蜷川カンパニーが上演したのをみたばかりだ。上演機会は滅多にない戯曲だが、この秋に偶然上演が続いた。
蜷川版は3時間以上あったが、山の手事情社版は90分に圧縮されている。『トロイラスとクレシダ』は大きく二つの筋から鳴る。表題にあるトロイアの男女の恋愛と別れ、嫉妬の物語とアキレウスとヘクトールの戦いを中心とするギリシア-トロイアの戦争の話だ。原作ではこの二つの軸となる話がうまくからみあっているとは言い難い。どちらかというと前半はトロイラスとクレシダが中心、後半はアキレウスとヘクトールが中心という感じだが、ドラマの焦点があいまいで捉えにくい作品である。そしてどの登場人物も魅力に乏しく、感情移入しがたいところがある。
山の手事情社版ではギリシア軍はカラス、トロイア軍は犬の扮装をしていて、この物語を動物寓話として提示していた。各場面はレビュー風に処理され、グロテスクな《キャッツ》という感じである。もっとも私は「キャッツ」を見たことはないのだけれど。歌はないけれど、山の手事情社の役者のしなやかな動きは舞踊的であり、時折《ルパム》と呼ばれる群舞の場面が挿入される。全体的に喜劇調だった。とはいえ私はそんなには笑えなかった。
舞台や役者の衣装からは、高級ナイトクラブのショーのパロディのような雰囲気も感じた。多彩な仕掛け、テクストレジの巧さ、大胆な読み換えなど演出上の創意には感心したけれど、多焦点で捉えにくい舞台だった。原作もそうなのだけれど。
山の手事情社の独特の調子の台詞回しが私を眠りに引き込む。利賀系、鈴木系の台詞回しは、その独特なイントネーションとリズムが私の眠気のスイッチを押してしまうことが多い。今回も気がつくと意識を失っている。隣に座っていた若い女性はもっと大胆に寝ていた。
やっぱり扱いにくい作品だと思う、『トロイラスとクレシダ』は。役者の身体表現とか演出の工夫とか、表現のレベルは高いのだけれど、私は入り込むことができない舞台だった。はっきり言うと失敗作。二ヶ月前に見た舞台で、ほぼ平行して古典戯曲を読む会で『トロイラスとクレシダ』を読んでいたにもかかわらず、山の手の舞台の印象は薄い。まあこれはうとうと観劇だったからだろうが。これより一月前に見た蜷川版の舞台の情景のほうがより鮮明に記憶に残っている。