時間堂
時間堂
- 脚本:三好十郎
- 演出:黒澤世莉
- 出演:鈴木浩司、菅野貴夫、浅井浩介、小川あつし、小田さやか、酒巻誉洋、猿田モンキー、高島玲、武井翔子、百花亜希
- 劇場:池袋 シアターKASSAI
- 上演時間:二時間半
- 評価:☆☆☆☆☆
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戦後の廃墟のなかの明日の見えない世界でさまよう日本人の精神風景を真摯に描き出した傑作戯曲。混乱した世界のなかでの人々の激しい葛藤の場面には見ていて息苦しさを感じる。登場人物はそれぞれの立場から「あるべきすがた」を主張する。貧困と絶望のなかの闘争で人々は互いに思いやることを忘れてしまっていたことに気づき愕然とする。
依頼していた新作戯曲の完成が遅れたため、時間堂は三月に入ってから急遽演目を「廃墟」に変更した。三月十一日の東北大震災のあとの混乱と不安のなか行われていたこの公演の稽古の様子を想像した。演出家と役者の戯曲への思いは震災によって図らずもさらに深く重いものになったに違いない。
派手で個性的なギミックのある演出ではない。密度の極めて濃い戯曲を丁寧に読み解き、そのメッセージを誠実に引きだそうとした演出家と役者の真摯な姿勢が感じられた。震災後のわれわれの混乱と不安を舞台上の人々に重ねずにはいられない。二時間半の上演時間、緊張感に満ちた役者の熱演に引き込まれ、時間の長さを感じることなく舞台を注視し続けた。