新国立劇場 2012/2013シーズン演劇公演『リチャード三世』特設サイト
- 作:ウィリアム・シェイクスピア
- 翻訳:小田島雄志
- 演出:鵜山仁
- 美術:島次郎
- 照明:服部基
- 音響:上田好生
- 衣装:前田文子
- 出演:岡本健一、中嶋朋子、浦井健治、今井友彦ほか。
- 劇場:初台 新国立劇場 中劇場
- 上演時間:3時間45分(休憩15分)
- 評価:☆☆☆☆
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2009年に鵜山仁は新国立で『ヘンリー6世』三部作を上演して好評を博した。私は第3部のみ見逃している。今回の『リチャード三世』は、シェイクスピアの薔薇戦争4部作の結末にあたる。今回の鵜山演出は、2009年の『ヘンリー6世』三部作で提示された世界観がそのまま踏襲されていた。いずれ4作一挙上演という企画で再演があるかもしれない。
舞台美術は新国立の舞台構造、特に奥行きの深さを効果的に使ったもので、客席のほうに大きくせり出したかたちになっている。この舞台の作り方は、色合いこそことなるが『ヘンリー6世』三部作と共通している。今回の舞台では赤茶色の砂が舞台上を多い、登場人物が歩くことで変化する砂の文様の変化や踏み込んだときのきしきしと砂が鳴る音も、演出的効果をもたらしていた。ずっと舞台上の下手前方にさらされる死者(人形を用いていた)、紗幕や透明のビニール幕の使用、回り舞台、そして多彩な照明などの視覚的効果が、象徴性の高い美術を作り出していた。
各登場人物のキャラクターの対立もしっかりと表現されている。とりわけタイトル・ロールを演じた岡本健一が素晴らしい。ねじ曲がりひねくれた心とその内面を表象する歪んだ身体を持つリチャード三世が放つ邪悪さと、邪悪であるがゆえ放つことができる強烈な磁力を、彼の芝居に感じ取ることができた。最初のほうにあるアン王妃を口説く場面も説得力があったし、最後の「馬をくれ」と叫ぶ見せ場もよかった。
薔薇戦争の終結が宣言される最後の緊張感が、深い余韻をもたらす。7月に見た子供のためのシェクスピアカンパニーの削り取ってエッセンスだけを提示するのとは対照的に、シェイクスピアの原作にある枝葉に感じられるやりとりも上演に取り込むことで、若干冗長に感じられるところはあるが、スケール感のある歴史劇の醍醐味、重厚なボリュームを味わうことのできる充実感したスペクタクルとなっていた。私は大きな満足感を得ることができた。
『リチャード三世』は原作も読んだことがあるし、上演もこれまで数回見ている。7月に子供のためのシェイクスピア・カンパニーの上演を見ていたので、物語や人物関係はおおむね頭に入っているつもりだったのだけれど、今回の上演舞台では最初の2時間は人物関係や展開がよくわからなくて、かなり混乱してしまった。上演前に、一回のホワイエに展示されている年表や概要、人物相関図を見ておけばよかった。終演後にそういう展示があったことに気づく。