二兎社
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- 作・演出:永井愛
- 照明:中川隆一
- 美術:太田創
- 音響:市来邦比古
- 音楽:近藤達郎
- 出演:竹下景子、山口馬木也、銀粉蝶、大沢健、内田慈、吉田ウーロン太、松浦佐知子、でんでん、花王おさむ
- 上演時間:2時間40分(休憩15分)
- 劇場:三軒茶屋 世田谷パブリックシアター
- 評価:☆☆☆☆
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昨年の新国立劇場の鵜山仁芸術監督解任騒動を演劇的に総括した作品だった。永井愛は鵜山仁解任反対の運動の先頭にたち、他の劇作家や批評家に連帯を呼びかけ、マスコミに新国立劇場の組織運営を批判した。しかし結果は鵜山仁氏は一期のみで芸術監督を解任、後任には執行部が推していた宮田慶子氏が予定通り就くことになった。永井愛と演劇人たちは官僚組織の横暴に対抗することはできなかったのだ。官僚は「仕事」として、自分たちの社会的生活のため、組織防衛、組織強化のために動く。一旦動き出すと官僚組織は狡猾で強力だ。片手間仕事ではその動きを止めることは難しいだろう。対抗するにはこちらも周到な戦略をたて、膨大なエネルギーを投入する覚悟が必要となるはずだ。
簡単に要約すると『かたりの椅子』では架空の地方都市で行われる芸術フェスティバルの運営をめぐり、芸術家たちが官僚に立ち向かう話だ。もちろん永井氏の新国立劇場芸術監督解任騒動がこの作品の土台になっている。銀粉蝶の演じる役柄は、新国立劇場理事長の遠山敦子を連想させる官僚組織のモンスターを寓意的に具現している。戯画化された登場人物たちが作り出す風刺的な笑いに彩られてはいるが、この舞台は重い問いかけを観客に突きつける。官僚組織のしたたかさ、強引さに対して、芸術家は芸術への素朴な愛をよりどころに、「正義」を振りかざして対抗することは果たして正しいことのか? 官僚組織のグロテスクさへの痛烈な皮肉とともに、永井と彼女の盟友たちが昨年の新国立劇場の騒動のときにとったナイーブな行動への反省も作品から感じられた。