- 作・構成:リミニ・プロトコル(ヘルガルド・ハウグ、シュテファン・ケーギ、ダニエル・ヴェッツェル)
- 演出:ダニエル・ヴェッツェル Daniel Wetzel
- 劇場:池袋 東京芸術劇場プレイはウス
- 評価:☆☆☆
これまでリミニの公演を面白くないと思ったことは一度もないので、今回も大いに期待していた。しかし今回は今ひとつ乗れなかった。統計を演劇的手法で可視化する着想は面白いのだけど、そこで現れるトーキョーは私の関心をひくものではなかった。
『100%トーキョー』では、東京23区内に居住する100人の人間が舞台に上がる。彼らは無作為に選ばれたわけではない。この100人は東京住民を代表する者として、その人数の割合は東京23区住民の男女比(51対49)、国籍(外国人は3%)、居住地(各区ごとの人口による)、年齢を反映したものになっている。この100人にさまざまな質問をなげかけることで、現代の東京のすがたを演劇的に可視化させるという試みになっている。100人へのアンケートの演劇的可視化は、100人の出演者が舞台上で移動することによってもたらされる。その結果、舞台奥のスクリーンに円形で映し出された上からの画面によって観客に提示されることが多かったが、そのやり方にはいろいろな工夫があって感心することが多かった。
この発想自体は、ネット上で一時期、拡散された「世界がもし100人の村だったら」を想起させる。いやTBSテレビで関口宏が司会をやっていた『クイズ100人に聞きました』がむしろ発想としては近いかも知れない。私の後ろの席には、出演者の知り合いと思われる中年女性のグループが座っていて、ひそひそ雑談しながらアンケート結果の予想を楽しんでいた。「これはけっこうあると思う」などと言いながら。楽しまれ方も『クイズ100人に聞きました』とよく似ている感じがする。
さて舞台にあがった100人ではあるが、彼らが東京を代表する100人と言われるとそれは異議申立てをしたくなる。確かに統計上の数字に従って、知り合いをたぐって集まった100名であるが、今の東京でこのような催しに参加する物好きと閑人ばかりなのだから(拘束日数は全日ではないにせよ、のべで5日間くらいあったと思う)、やはり「普通」の人たちからはかなりずれたところで生活している人たちが多かったように見えた。そしてその彼らにしても、投じられた質問に素直に本音を明らかにするほどナイーブではない。日本人の建前というのはちょっとやそっとのゆさぶりでは壊すことができないほど強固なのだ。「ああ、まあそうだろうな」とうなずくような予定調和の回答結果に、意外な発見は含まれていなかった。ヨーロッパの都市ではうまくいったかもしれないが、東京ではヨーロッパと同じ方法はうまく機能していなかったように私には思えた。