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- 原作:山本周五郎
- 脚色:田島栄
- 演出:十島英明
- 美術:織田音也
- 照明:寺田義雄
- 出演:嵐圭史、津田恵一、武井茂、益城宏、高橋佑一郎、寺田昌樹、松涛喜八郎、前園恵子、西川かずこ、今村文美、妻倉和子、浜名実貴
- 劇場:浅草公会堂
- 評価:☆☆☆★
1987年以来、400回以上、上演されている前進座のレパートリーの一つ。小石川養生所に新しく入って来た若くて高慢な蘭学医、保本登の視点から、この養生所で貧民の医療に生涯を捧げる赤ひげの活躍が描き出される。原作は連作短編集だったように思う。前進座の『赤ひげ』は原作からいくつかのエピソードをピックアップし、構成した翻案。赤ひげの時にユーモラス、大胆なふるまいが観客を楽しませる。しかしこの作品のテーマとして強調されているのは、赤ひげの大らかなヒューマニズムよりも、赤ひげを通じ成長していく若き医師、保本の姿であるように思える。
赤ひげを演じる嵐圭史も保本を演じる高橋祐一郎ももう十数年、この役柄を演じ続けていている。芝居自体は娯楽性の強い通俗的な内容で私の好みではなかったけれど、終幕で保本の結婚の場面で、観客席から大きな拍手が起こる。その素朴で暖かい雰囲気から、前進座が自分たちを必要とする観客のための芝居を誠実に提示し続けていることが伝わってきた。