- 作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
- 美術:中越司
- 音楽:伊藤ヨタロウ
- 照明:原田保
- 衣裳:前田文子
- 出演:堤真一,小泉今日子,犬山イヌコ,秋山菜津子,松尾スズキ,田中哲司,山崎一
- 劇場:渋谷 Bunkamuraシアターコクーン
- 評価:☆☆☆★
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強烈な存在感を発揮する役者を集め,ケラリーノ・サンドロヴィッチが作・演出したわりには,それほど面白くなかったなぁというのが正直な感想.休憩を除き3時間15分の長さは若干冗長に感じられれた.
最初にキャスティングありきだったのだろうか,それぞれの役者がその個性を生かせる場をうまく設定してあるドラマ作りだった.二つの物語が交互に演じられる.各役者はそれぞれの物語で別の役を演じる.
近未来の強制収容所と悩み相談をしながら高価なお守りを売りつけるいかがわしい通信販売会社の事務所.近未来の強制収容所というのは,ザミャーチンの『われら』,オーウェルの『1984年』以来,近未来もののある種の定型になっている感あり.あえてこの型の設定を選ぶには,目新しさをねらうには型を崩す何らかの仕掛けを導入する必要がある.しかしケラのこの作品では,この近未来ものの物語に目新しさに乏しい.平行する「会社事務所」の物語とどうリンクするのかと思っていたら,結局最後まで二つの物語は交差することのないまま終わってしまった(ように僕にはみえた).劇の唐突な終わり方は作者が整合性ある物語を作るのを投げ出してしまったような感があり.不条理劇といってしまえばそれまでだが.役者の芸を生かした場面場面でのギャグの切れ,映像や照明,音楽の使い方のセンスのよさでそれなりに愉しむことはできたのだが,物語づくりに雑で投げやりのところが感じられ,ドラマとしての厚みは乏しいように僕は思った.