http://www.nelke.co.jp/stage/pippin/
- 脚本:ロジャー・O・ハーソン [ボブ・フォッシーBob Fosse]
- 音楽・作詞:スティーヴン・シュワルツStephen Schwartz
- 翻訳・訳詞:小田島恒志
- 演出・振付:上島雪夫
- 音楽監督・編曲:奈良部匠平
- 美術:中根聡子
- 舞台監督:北條孝、佐川明起
- 照明:柏倉淳一
- 出演:Kimeru、パパイヤ鈴木、鈴木蘭々、杏子、中尾ミエ
- 劇場:天王洲アイル 天王洲銀河劇場
- 時間:二時間二五分(休憩一五分)
- 評価:☆☆☆
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普段ならまず関心を抱かない類の舞台だが、原作がボブ・フォッシー製作の1970年代に超ロングラン上演された伝説的ミュージカルであること、翻訳が小田島恒志先生であることから、チケットを購入した。ピピンは九世紀フランス帝国のシャルルマーニュ(カール大帝)の息子の一人である。あまりに偉大すぎる父親のもと、自己を見失った若い王子が本当の自分を探す放浪の旅に出て、成長していくという「自分探し」のストーリー。
主役のピピンはKimeruと相葉弘樹のダブルキャストでの公演だった。どちらも若い女性に熱烈に支持されている男性アイドルのようだが、僕は全然知らなかった。演出の上島雪夫は、劇団四季出身で、ダンサー・振付け師として活躍している人らしいが、僕はこの人の舞台を見るのはこれが初めてだった。見る前はいったいどんな人がこの舞台に関心を持つのか不思議だったのだが、両主役の人気でチケットは完売になっていた。劇場の観客の九割以上は若い女性で、この主役を演じるこの二人の若い俳優のファンのようだった。
ある意味でプロ意識に徹した舞台作りがされていて、主役を演じる役者(僕が見た回はKimeru)を全面的にフィーチャーした演出になっていたように思う。観客の大半は主役の役者目当てなのだからこれは正しい。脚本を主役を見せるための外枠でしかない。しかしこうなるとわざわざ小田島恒志が訳を作る必然性もないように思ってしまう。おそらく台本はオリジナルをかなりいじっているように思った。シュワルツの音楽はオリジナルのものを使用したが、振付と演出プランは新たに創作したものだった。群舞のシーンが多くあったが、ダンスシーンはさすがに丁寧に作ってあったように思った。物語を深化させるよりも華やかな群舞と軽いのりのギャグをタイミングよく混ぜることで、娯楽性の高い作品となっていた。しかし出ている役者の演技の質はどこか安っぽく、重厚さにかける。ねらってそうしたのかもしれないが、表現が全般的に子どもっぽく、ゴージャス感に乏しい舞台でもあった。
主役を演じたKimeruは愛嬌があって爽やかな雰囲気だけれども、歌唱は音程が不安定でいまひとつ。パパイヤ鈴木は劇全体の進行を担う、劇作家という重要な役柄。ダンスはもちろん、歌も実に達者であるが、あの風貌はインパクトが強すぎてかえって芝居を破壊しているように僕には思えた。