加藤健一事務所
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- 作:レイ・クーニー
- 訳:小田島雄志 小田島恒志
- 演出:加藤健一
- 美術:石井強司
- 照明:五十嵐正夫
- 音響:松本昭
- 衣裳:加納豊美
- 出演:加藤健一、村田雄浩、日下由美、加藤義宗、一柳みる(昴)、山野史人(青年座)、福島勝美(道学先生)、かんのひとみ(道学先生)、石坂史朗、坂本岳大、枝元萌、SHOWTA.(ショウタ)
- 劇場:下北沢 本多劇場
- 上演時間:2時間15分(休憩15分)
- 評価:☆☆☆☆
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イギリスの人気喜劇作家レイ・クーニーの代表作の上演。加藤健一事務所がこの作品を上演するのは今回が二回目だという。
シチュエーション・コメディのお手本のような作品である。状況の錯綜が笑いを生み出す。ドアのやたらの多いセット(これも伝統的な喜劇の型)が登場人物の様々なパターンの邂逅の場を作り出す。主人公は苦し紛れの嘘を重ねてその場をしのごうとするのだけれど、嘘がだんだん拡大してきて状況はますます悪化し、収拾がつかなくなる。その混乱の極みにおいてもさらに主人公は嘘で無理矢理事態を展開させようとするのであるが。ドタバタや軽いエロねたも適宜挿入される。フランスのブールヴァール喜劇の世界と共通点が多いように思う。舞台上の状況は破綻していくのだけれど、作品の笑いはきっちりと細部まで計算されたうえで書かれている。
「訳者は役者に勝てない」というのはこの戯曲の翻訳者である小田島恒志先生がどこかで書いていた言葉だが、先生のゼミで原文を読んだときにはいったいどんな具合に話すとこの台詞が不自然でなくなるのだろうか、と思っていた箇所も手慣れた役者の技で見事な喜劇的効果を生み出していた。
平日マチネ公演で本多劇場はおばさんだらけだったが、喜劇的仕掛けがかなりの精度で決まっていて、劇場は始終笑いに包まれていた。僕は、うーん、まったく退屈はしなかったし、十分に楽しんでみることはできたのだけれど、作品の笑いの高い安全性がものすごく物足りない。戯曲の作りの巧みさ、そしてその仕掛けをしっかりと受け止める安定した演技・解釈ゆえにとても人工的な作品に思えてしまう。日常の憂さを忘れさせる健全でからっとした笑いではあるけれど、この手の笑いを受け止めるセンスが僕には欠けているのだと思う。