閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

夏の夜の夢

プロペラ Propeller
http://www.geigeki.jp/saiji_052.html

  • 作:ウィリアム・シェイクスピア
  • 演出:エドワード・ホール Edward Hall
  • 美術:マイケル・パベルカ Ben Ormerod
  • 照明:ベン・オーメロッド
  • 音楽:プロペラ(原曲アレンジ:ジョン・トレンチャード)
  • 出演:Bob Barrett, Richard Clothier, Richard Dempsey, Richard Frame, Jon Trenchard
  • 劇場:池袋 東京芸術劇場中ホール
  • 上演時間:2時間40分(休憩20分)
  • 評価:☆☆☆☆
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プロペラは1997年に結成されたイギリスの劇団で、役者はすべて男性である。今回がたぶん初来日公演だと思う。野田秀樹芸術監督就任のオープニングの企画としては日本では知名度の乏しい劇団によるシェイクスピア上演とはいささか地味な感じがしたが、中ホールの客席は二階までほぼ埋まっていた。

あんまり期待せずに見に行ったのだけれど、やはりシェイクスピアの本場のイギリスの劇団だけあって、男優のみの表現で連想してしまう際物っぽさを感じさせない、本格的な趣のあるシェイクスピアだった。人物造型が明確で、その演技はディテイルまで丁寧に演出されている。演技のやりとりにリズムとスピード感があって、展開にたるみがない。といっても前半はちょっともたついた感じもあったのだけれど。女役の男優は「女形」を演じるのではなく、男性という属性をあえてはっきりと示したまま、女役を演じる。衣装は女性のものだし、簡単な女メイクもしているが、頭にはかつらを冠らずに短髪をさらしている。所作や声色も特に女っぽくしているようには思えないのだけれど、舞台上では違和感なくハーミアやヘレナになっていた。視覚的にはごつごつとした印象でそれがユーモラスではあったけれど、そのユーモラスな雰囲気に加え、男優だけが演じることでかえって劇世界の緊密度、統一感が増幅されるという効用があるように僕には思えた。アンサンブルのよさ、バランスのよさを感じさせる公演だった。芝居のなかで使われる音楽もとても趣味がいいし、使い方が効果的だった。役者たちが楽器を演奏し、合唱する。照明の効果とその転換のタイミングのよさも印象に残る。

隣に高校生ぐらいの女の子二人が座っていて、彼女たちの幕間の会話がちょっと面白かった。
「『キレイ、キレイ』って台詞がたくさんあるのが受けた。男がやっているのに」
「キレイ、って言っているんだから、キレイってことになってるでしょ、男でも」
「でもあれだったら、私のほうが勝ってるかも」
「ここで対抗意識を出してどうするん?」

思わず横目でちらっと見たけれど、かなり可愛らしい顔立ちの女の子だった。確かに、勝ってる。