閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ヴェニスの商人

劇団 シェイクスピア・シアター
http://www2.odn.ne.jp/shkspr-thr/

平澤智之・木村龍之介・高山健太・三田和慶・安田龍司・新門学
住川佳寿子・木村美保・中島江美留・中森江美・佐藤真琴・川口史・喜久山優子
槇由紀子・松本洋平・内田聡明・押切英希・徳丸伸二・大場泰正

  • 上演時間:2時間45分(休憩15分)
  • 劇場:六本木 俳優座劇場
  • 評価:☆☆☆★
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黒背景の素舞台での上演。
前半1時間半、後半1時間。前半でポーシャの館での「箱選び」の場面まで。後半はアントーニオとシャイロックの法廷の場から。「箱選び」と「肉一ポンド」というなぞなぞ、とんち比べめいたやりとりで、人生を翻弄されてしまうなんて、ひどい話だなと思う。でも人生ってそういう面もあるような気もする。えげつないユダヤ人差別もあまりにも露骨過ぎて、思わず笑ってしまいそうになる。

前半、単調でリズムが悪く、シェイクスピア・シアター独特の台詞回しについていくことができない。後半に収束するエピソードがばらばらと提示されるので、原作からして散漫で冗長に感じられる部分なのだけれど、禁欲的なまでに簡素なシアターの舞台はこの冗漫さを支えきれない。30分ほど落ちてしまった。
後半法廷に男装したポーシャが現れるようになってから、展開が収斂していき、舞台にも緊張感が生まれる。いかにも芝居くさい強引な仕掛けを楽しむことができるのがシェイクスピア劇の面白いところだと僕は思う。
最後の場面、ポーシャが指輪を渡してしまってしまったことでバッサーニオを責める場面がおかしかった。そして二組の男女の結婚生活の祝福で終わる大団円は、幸福感に満ちていてとても素敵だった。観劇後は晴れやかな気分になった(シャイロックには気の毒であるけれど)。

シェイクスピア・シアターの近年の芝居で主役を演じる平澤智之は本当にいい役者だと思う。見た目もいいし、あのいかにも嘘くさいシェイクスピアの人物の言動に説得力ある表現を与える術も心得ている。正直、シアター以外の場所で演じる平澤智之の姿も見てみたいように思う。

毎回思うことだけれど、俳優座劇場の舞台は今のシェイクスピア・シアターの芝居には広すぎるように思う。今日の舞台はとくにガランとしているように感じられた。もう少し小さい小屋でやったほうが、凝縮感がでてもっと楽しめることは確実だと思うのだけれど。客席と対面する舞台なのでなおさら舞台へのがらんとしあ距離感を感じてしまう。しかし次回公演は、俳優座劇場よりはるかにガランとした感じのあうるすぽっとで公演だとのこと。うーん、どうなるかな。