ひとみ座
http://web.mac.com/hitomiza/iWeb/macbeth/Top.html
- 作:ウィリアム・シェイクスピア
- 訳:松岡和子
- 脚本:友松正人
- 演出:藤川和人
- 人形美術:片岡昌
- 舞台美術:大沢佐智子
- 音楽:やなせけいこ
- 音響効果:佐藤謙一
- 照明:坂本義美
- 出演:人形劇団ひとみ座
- 劇場:六本木 俳優座劇場
- 上演時間:2時間(休憩15分)
- 評価:☆☆☆☆
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ひとみ座は、1960年代にNHKが制作した人形劇の伝説的作品「ひょっこりひょうたん島」を担当した老舗の人形劇団である。前から一度見てみたかったのだが、なかなかタイミングがあわずこれまで見る機会がなかった。
ひとみ座の『マクベス』初演は1961年、今から40年以上前のことである。大型の人形を使った大人向けの本格的なシェイクスピア劇上演は当時きわめて異例のもので大いに評判になったらしい。
ひとみ座による『マクベス』上演は今回で何回目になるのか知らないが、今回の公演では人形、演出とも一新されているようだ。人形劇の可能性のひとつを感じさせる非常に興味深い公演だった。人形造形の美しさとその動きのやわらかさがとりわけ印象に残る。
人形は大型で、予言を行う魔女は一体を三人で操作する三人遣いだった。魔女以外ではマクベス、マクベス夫人が三人遣いになる。魔女はほかの人形よりはるかに大型で、彼女たちだけが人間風の顔立ちをしている。ほかの登場人物たちの造形はメタリックな質感のある昆虫をモチーフとした大変印象深いものだ。人形の動きはとても繊細でこうした質感を生かしたものになっていた。人形劇では人間が演じる芝居よりもさらに抽象性、象徴性が高くなる。この美しい人形造形と操作によって、原作のテクストの象徴性がより効果的に引き出されていた。
大量の人形(およびその使い手)が出てくる合戦場面がスペクタクルとしてよくできていた。最後の戦いの場面など、もっと死屍累々に舞台上を埋めてほしかったようにも思ったけれど。
不満を感じたのは脚本である。松岡和子訳をベースとして採用していて、上演時間は2時間強にまとめていたが、「こどものためのシェイクスピア」のような大胆で思い切った再構成をしてほしかった。脚本の「切れ」がいまひとつで、展開にスピード感が乏しいのだ。大人向けの人形劇作品でテクストに本格的に正面から向き合った上演にしたいという意気込みを感じたが、人形造形が作り出す鋭利な象徴性を思うと、脚本は冗長で、人形劇の特性があまり生かされていないように思った。マクベス、マクベス夫人の人物造形にも不満を覚えた。中途半端に写実的。もっと徹底的な寓意を感じさせる解釈であるほうが僕には好ましく思える。
展開のリズムの悪さと照明が始終暗かったため、何度か眠りに落ちそうになる。
人形劇の表現の可能性を感じさせる意欲的な公演ではあったが、全体としては、見る前の期待が大きかっただけに、思っていたほどには斬新さ、衝撃的な面白さは感じなかった。