閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

あの人の世界

サンプル
http://www.samplenet.org/

  • 作・演出:松井周
  • 美術:杉山至+鴉屋
  • 照明:松本大
  • 音響:中村嘉宏、小宮聖子
  • 衣裳:小松陽佳留
  • 出演:辻美奈子(サンプル・青年団)、古舘寛治(サンプル・青年団)、古屋隆太(サンプル・青年団)、山崎ルキノ(チェルフィッチュ)、渡辺香奈(青年団)、奥田洋平(青年団)、石橋志保(中野成樹+フランケンズ)、深谷由梨香(柿喰う客)、芝 博文、田中佑弥、善積 元、羽場睦子
  • 上演時間:1時間45分
  • 劇場:池袋 東京芸術劇場小ホール
  • 評価:☆☆
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こんな作品を発表できるのだから、松井周は若くしてもうすでに巨匠の風格がある。このところ松井周は作品を発表するたびに表現が閉じていくように感じられたのだけれど、この作品も松井の妄想趣味の表現がさらに先鋭化している感じがした。変態的幻影劇、断片的妄想のコラージュ。松井周は自己模倣を繰り返しながらどんどんマニアックになっているように思える。残念ながら今回は僕はその深遠な変態ワンダーランドに浸ることはできなかった。脱落。退屈で眠い。もし休憩があればその時点で帰っていただろう。幕切れの場面の絵はばっちり決まっていて美しかったけれど。松井周とサンプルは今後もずっとこの道を追求していくのだろうか。

変態動物ものといえば春に見たゴキコンの素晴らしい舞台を思い出す。ゴキコンの舞台のほうが僕にとってははるかに刺激的で面白かった。
松井周は変態道を歩みつつも、最後のところでは役者に配慮し、表現上の厳しい対決を避けているような気がする。一見エキセントリックな表現にも予定調和のなれ合いが透けて見えるような感じがする。