閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

A Vital Sign ただちに犬

劇団どくんご公演 第25番

  • 構成・演出:どいの
  • 美術・衣裳・人形:uka
  • 大道具:健太
  • 出演:空葉景朗、暗悪健太、五月うか、2B、まほ、ワタナベヲコ
  • 上演時間:1時間50分
  • 会場:井の頭公園西園ジブリ美術館裏 特設犬小屋テント劇場
  • 評価:☆☆☆☆★
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昨年、その独特のスタイルに衝撃をうけた旅の劇団、どくんごが東京にやってきた。
井の頭公園のジブリ美術館裏手の特設“犬小屋”テントでの公演。小屋の風情だけで胸がわくわくする。客は80人ほどいただろうか。ほぼ満席だった。
上演時間は二時間弱。やっぱり面白かった。どくんごでしか味わえないいびつだけれど恐くない、アットホームなアングラの空気を存分に楽しむことができた。

開演前の雰囲気で既に異世界に引きずり込まれる。奇妙な風貌の女優ふたりが舞台に座って雑談している。一応ぐっずを売っているようなのだけれど、売り込みらしいことは全く話さない。テント小屋内部は小学校の学芸会さながらちゃちな装飾で無秩序にごたごたと飾られていく。この装飾は劇の進行に合わせて徐々に取り外されていく。
作品は昨年同様、巨大な白犬(のぬいぐるみ)を核に、各役者が自由に想像力を働かせ、シュールなエピソードを展開するというもの。ナンセンスで滑稽でエキセントリックで不気味なバラエティショーのような感じである。役者は昨年とは何人か入れ替わりがあったようだ。前衛的、詩的な表現と大衆的な笑いが混じり合っている。客席には小学生の子供も何人かいた。
オープニングは音楽演奏。この歌がまたとてもいい。演奏者は役者だ。そのきてれつで奇形的な外観と童謡風の親しみやすく美しい旋律の組み合わせがいい。一応推理小説仕立てになっている。白い犬の殺害、あるいは傷害の犯人を探し出すというモチーフがそれとなく提示されるが、この枠組みはあまり徹底して利用されない。BGMにのせてきっちり作られた部分とルーズで即興的な部分が混じり合い、展開は独特のリズム感がある。おおむね6、7分ごとにエピソードが転換していく。そのつながりは夢のように自由でとりとめがない。
中盤はちょっとだれる感じもあるが、最後にまたインパクトのある仕掛けで観客をより深いファンタジーへと導いていく。
作品構成の枠組みは去年と同じだが、そこで用いられる趣向には大きな変更が付け加えられていた。

劇団どくんごはやっぱり凄い。一匹の犬から広がる荒唐無稽な妄想が作り出す陽気で奇妙な世界に飲み込まれてしまった。素朴、純真な子供からひねくれ歪んだ大人まで楽しむことのできる稀有な演劇を体験できる。八月末に飯能、九月に足立区で公演が予定されているとのこと。そのときにまた見にいくつもり。次は打ち上げにも参加したい。