閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ターン

DVDでの観賞.北村薫の「時と人」三部作の中では最も映像化が難しそうな作品である.飛ばされてしまった世界では登場人物は主人公の女性一人だけで,小説中ではその内面はモノローグと女性が作り上げた架空の対話者の語りかけで表現される.それに加え,少なくとも前半は執拗に毎日同じことがくりかえされる単調さ.
平山秀幸は小説の描く世界の静謐さを映像にうまく取り込みつつも,単調さをうまく避けている.仕掛けの仕掛けどころがうまいのだ.見ていて緊張感はとぎれるどころか,話が展開するにしたがいどんどん映画の中の空気か圧縮されていく感じ.異次元(?)の間のプラトニックな恋のやりとりのせつなさ,美しさには胸が締めつけられるような思いだった.ラストシーンのこちらの期待感を盛り上げる「ため」も非常に効果的だった.
牧瀬里穂はサル顔ではあるものの,この映画では何という可憐さ,美しさか!キュートそのもの.しかも細やかで,情感にあふれる演技のうまさ.