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芥川龍之介の短編「六の宮の姫君」の創作にまつわる謎を、芥川のほかの作品や芥川の畏友であった菊池寛の文章、物語の源泉となった古典のテクストなどを手がかりに、読み解いていくミステリ。
テクストを丁寧に読み込んだときに感じたちょっとしたひっかかりが、芸術創作の秘密の解読にまでつながっていく面白さ。上質の文芸研究は謎を解き明かすという点でまさに推理小説に似た醍醐味があることを改めて気づかせてくれる好篇。近代日本文学の研究者から見るとどういう評価なのかに気になるが、大半の文芸研究者の研究がこの小説の仕掛けとして使われた「卒業論文」が解き明かすレベルの知的な快楽を提供できないばかりか、方法論的にも徹底さを欠いていることは明らか。
想像力の点でははるかに及ばないにせよ、僕の研究もせめてこのレベルの文献探索と資料の読み込みは心がけなくては。