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主人公の女性の描き方に軽い反発を覚えつつも、知らず知らずのうちに優れた本格推理小説でありながら、巧みな伏線で構成された教養小説、「円紫師匠と私」のシリーズのとりこになってしまった。
主人公の「私」に投影された作者の女性観や願望は、ときにあまりにも露骨な感じがして不快感を感じることは感じるのだが、同時に共感もある。文学青年、中年にとっての理想的な女性像、きわめて都合のよい理想像ではあるけれど、の一典型であることは間違いない。幻想のどこにもいないだろう女性像である。
『朝霧』では芥川の『六の宮の姫君』をテーマとする卒論を書き終えて、出版社に就職し社会人となった「私」と再開することになる。三篇の短編が収められている。三篇目の表題作がいい。はるか過去のせつない恋の謎が明らかになる瞬間に、その可憐な美しさにぎゅっと胸を締め付けられるような思いを「私」と共有することになる。謎のトリック自体はありがちなのであるが、その背景にある物語の繊細な美しさに引き込まれた。