閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

宗教が往く

松尾スズキ(マガジンハウス,2004年)
宗教が往く
評価:☆☆☆★

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二段組426頁の長編.うち64頁は前口上で,小説執筆の大きな契機となったスズキととある女性の恋愛の過程を詳細に綴る.最終的には小説執筆中に破綻するこの恋愛は虚構の小説世界の中でも,時に生々しく赤裸々かつ自虐的に暴露される.
小説はとある劇団,そして宗教団体の主催者となったフクスケ(著者の分身でもある)の数奇な生涯を描いたもの.この人物の周囲に集まってくる人間がことごとくエキセントリックで狂っていて破滅的.松尾自身の経験をドラッグでらりった状態で病的に極端に拡大すればこの小説の世界が出現するのではないか.モデルとなっている人物はおおむね特定可能.
著者の破壊的・破滅的・自虐的に屈折した世界観を文章化したもので,あらゆる人物が常軌を逸したまま突っ走っしる濃厚きわまりない悪臭を放つスープのような小説.
性的欲望のおぞましい面が特に露悪的に描かれている.スピード感ある文体.ただし読後感は心地よくない.どんよりと退廃してしまいそうな感じ.