閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

グミ チョコレート パイン :パイン編

大槻ケンヂ(角川書店、2003年)
グミ・チョコレート・パイン パイン編
評価:☆☆☆☆

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高校時代の著者がモデルのオナニストを主人公とする青春小説。といっても前編、チョコレート編から11年を経て刊行されたパイン編では、これまででてきた数々の登場人物が著者の自伝的な枠組みから解き放たれ、青春群像映画の登場人物のごとくふるまいはじめる。話はそれゆえ荒唐無稽に流れるが、青春小説の王道的なパターン、構成のもと、展開する。荒唐無稽な展開、空想的なレベルにまで達してしまった登場人物設定ゆえに、前二作ほどの感情移入はできないけれど、何ともおさえきれない若い日の衝動と自己嫌悪、己へのいらだちぶりを追体験することができる。小説はハッピイエンド。エピローグはあまりにも甘すぎ苦みに乏しい気もするが、著者の作中人物への愛着ゆえの結末なのだろう。