- 製作年度:2002年
- 製作国:フランス
- 上映時間:104分
- 監督:ニコラ・フィリベール
- 音楽:フィリップ・エルサン
- 評価:☆☆☆★
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
DVDでの観賞.日本でフランス語教材として使えるかもしれないと考え,帰国前にパリで購入したもの.フランスのオーベルニュ地方の寒村にある小さな小学校の一年を追うドキュメンタリー.地域は自然の豊かさよりもむしろ荒涼とし殺伐とした自然を感じさせる山奥の閉ざされた土地.
ベテラン教師であるジョルジュ・ロペスの常に静かで安定した子供たちへの接し方に共感を覚える.べたべたと子供によりかかからない,一定の距離感のある自然な接し方である.子供たちも素朴で無邪気.先生へ抱く信頼感の大きさがその言動から伝わってくる.演出は最小限.学校生活の牧歌的情景を優しく映し出すのみで,撮影者は決して積極的な形で子供たちと先生の間で存在を主張しようとしない.
フランスでは大ヒット.日本でもかなり話題になった作品.観客はここで映し出される素朴で暖かみのある学校風景の中に,記憶の中でユートピアとなっている幼き日の自分の姿を見いだしたに違いない.
おまけでついていたカンヌ映画祭に参加した映像も楽しい.先生と子供たちそして父兄も映画祭に招待された.思わぬ「ハレ」の舞台にとまどいつつも軽い躁状態ではしゃいでいる姿がほほ笑ましい.
この先生,その後肖像権の問題を持ち出し,訴訟を起こした.多額の報酬を要求しているとのこと.思わぬ名声が田舎教師を「狂わせて」しまったようだ.素朴で誠実な田舎教師であるがゆえに,状況の変化に過剰に敏感に反応してしまったのだろう.不幸な話ではなるが,人間の業というものを考えさせる出来事でもある.