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《円紫師匠と私》シリーズの最初の作品.北村薫の実質的なデビュー作でもあるが,文体はすでにこなれていて完成度は高い.女子大生の「私」が大学に入学後の一年を五編の短編で記す.最初と最後の短編がハッピーエンドだが,中の三篇は少々苦味を感じるエピソード.
《私》に露骨に投影された著者の理想的女性像が気恥ずかしい.ここまで性的な自意識を暴露する作家は実はそれほどいないような気もする.もちろん「私」は,僕を含め多くの読者に指示された理想的な女性像のひとつの優れた典型であるのだけれど,その女性像はあまりにも一方的な男性の欲望の反映であるように思える.強烈なロリータ・コンプレックスのひとつのバリエーション.共感を覚えつつも,生理的なおぞましさも感じる部分もある.