閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

人間臨終図鑑II

山田風太郎(徳間文庫、2001年)
人間臨終図巻〈2〉 (徳間文庫)
評価:☆☆☆☆★

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文庫版第二巻では、56歳から72歳の間で死んだ有名人の死の様子をつづる。第一巻は若死にの人だったため、結核で死んだ人が目立った。この病は今では必ずしも死の病ではない。第二巻、現在では壮年から初老にかけての死亡者には脳溢血で死ぬ人が目立つ。脳溢血は現在ではもっと高齢の人の病という感じがするし、その数も徐々に減っていて、今では脳梗塞のほうが多いようだ。そして心不全心筋梗塞で死んだ人もこの巻には多い。36歳にして心筋梗塞発作に見舞われた僕は、まさにいつ死んでもおかしくない。
さすがに人の死に様をこれだけ続け様に読むと気が沈む。心筋梗塞死の人物の項では特に己の死に様を想像してしまいさらに陰鬱になる。50,60といえば現在の日本ではまだまだ元気いっぱい。僕の両親の年代であるし、自治会の役員はほとんど皆この年代の人びとばかりだ。臨終図鑑を読むと、この年代になるとほんのちょっとしたきっかけで急速に人間が弱ってしまう例が多いことに気づく。特に心臓疾患を抱えている人間はいつ発火するかわからない時限装置を抱えているようなものだ。僕もいつでも死ねる覚悟をしておく必要があるだろう。しかしこの「図鑑」に掲載されるような人びとは、たとえその死に際が悲惨で醜いものであっても、何ごとかを成した人物である。相対的に自分はなんと意味の乏しい人生を生きていることか。美しい娘を一人この世に残したことで、己の存在を示したのだから、それで十分といえば十分ではあるが。満足して死に臨むべきだろう。