閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

當世流小栗判官(とうりゅうおぐりはんがん)第二部

http://www.ntj.jac.go.jp/performance/10.html

原作:近松門左衛門,文耕堂・竹田出雲,他
脚本:奈河彰輔
補綴・演出:石川耕士
演出:市川猿之助
美術:金井俊一郎
照明:吉井澄雄
出演:市川右近市川笑也,市川春猿,市川笑三郎,市川猿弥,市川段治郎
劇場:九段下 国立劇場 大劇場
評価:☆☆☆★

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第二部では最初に口上で第一部の展開のダイジェスト版が演じられる.その後,二幕五場の上演.今日は三階席からの鑑賞.宙乗りがあるというので三階にしたのだが,二等席とはいえ舞台を一望できるよい席だった.今日は空席が目立った.客の入りは七,八割か.空席のある劇場は,役者の熱演にもかかわらず,空いた座席から熱気が抜けてしまうようで寂しい.
『小栗判官』の筋書きを読み返してみると,各場各場で主人公の判官だけでなくいろいろな登場人物の見せ場がしっかりと設定してあるし,展開も波瀾万丈,それでいてストーリーの一貫性もあり,非常に面白そうな演目である.
今日の公演では,白馬宙乗りでの退場での手慣れた観客サービスは楽しかったし,その他にも,判官との結婚を一方的に直前になって破棄された春猿演じるお駒の愛憎の表現や,お駒とその母お槇(笑三郎)の格闘,大詰のの一場の道行の場面のオープニングで暗闇から一気に白い雪景色の中と照手姫の赤い衣裳の対比への鮮やかな転換,熊野の霊湯の場面での竹本の節と役者の朗唱と動きの音楽的同調の美しさなど印象に残る場面は多かった.しかし見せ場への過程が単調で,かなり見せ場の作りはかなり濃厚にもかかわらず,全体としてはすかすかで充実感に乏しい舞台であるように僕には思えた.