酒井順子(講談社文庫,2001年)
評価:☆☆☆☆
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日常の人の振舞いを丁寧に観察して,その本音の部分を毒のある表現で巧みにほじくり出すといういつものスタイルだが,題材がうまく適合してこの著作では「酒井節」ののりがとりわけ良いように思う.様々な日常的状況の中での「ホメ」のケーススタディだが,称賛の言動の背景にある社会性,儀式性,そして偽善性が,的確な例示と黒いユーモアの注釈によって明らかにされる.
ホメ・ホメられというのは基本的な社会的技術であるが,僕自身の例を考えても,文化に拘束された定型的な行為であるかを再認識する.本気で褒めるのはとても難しいことなのだ.この著作で著者があげている「ホメ」言葉の多くは,誰もがどこかで耳にしたり,あるいは自らが発した記憶があるはずだ.
「彼氏・夫ボメ」「エッチぼめ」「夫婦ボメ」「子・ペットボメ」の章がとりわけ思い当たる節多く,面白く読んだ.
本書では触れられていないが,大学院で横行している「先生ボメ」が思い浮かんでしまう.