閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

71フラグメンツ

原題は「偶然の時間軸についての71の断片」.複数の人物の日常風景がバラバラの断片の形で時間軸に沿って提示される.最終的にこれらの互いに関連性のない断片的日常はウィーンの銀行での銃乱射事件に帰結する.断片で示され,平行して提示される各々の人物の日常の横軸の関連は全く説明されない.観客はこれらの断片が最終的に冒頭で提示された「ウィーン銀行乱射事件」に結びつくことはもちろん予想している.しかし各断片は,一応時間軸にそって並んでいるものの,その連なりは整合性のある解釈を拒否するかのような「反=論理的」なもので,解釈を試みる観客の神経をいらつかせる.
結末は一気に唐突にやってくる.悲劇的結末に至る道筋には動機らしい動機は見あたらない.虚ろな衝動が引き起こした神のきまぐれのような残忍で意味を欠いた現実が提示される.
先日観た『セブンス・コンチネント』と世界観および主題の提示の仕方には共通性があるが,表現ははるかに即物的で観客を突き放したもの.