三枚目と二枚目の対照的な役柄を花形役者が演じるという歌舞伎的趣向のために，本筋とは全く関係のない序幕で三枚目の権九郎（菊五郎）と白玉（菊之助）の道行が置かれる．こうした逆説的趣向はとても好きだ．矢ガモの着ぐるみ，シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』や仲間由紀恵の『恋のダウンロード』などを盛り込んだはちゃめちゃな遊びはそれなりに楽しめた．この権九郎が，二幕以降では世話物の英雄，助六に生まれ変わるのだ．
作品は歌舞伎十八番の『助六』のパロディ．大詰の最初の場でリズムが乱れ，テンポがもたつく．この場が重くて退屈してしまう．幕切れの菊五郎劇団ならではの派手な立ち回りの切れも今ひとつ．
