閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

正しい街

飛ぶ劇場 vol. 26
東京国際芸術祭2007参加作品

  • 作・演出:泊篤志
  • 照明:乳原一美
  • 音響:杉山聡
  • 衣装:内山ナオミ
  • 劇中歌:泊達夫
  • 出演:権藤昌弘、内山ナオミ、藤尾加代子、寺田剛史、宗真樹子
  • 上演時間:2時間20分
  • 劇場:西巣鴨 にしすがも創造舎特設劇場
  • 評価:☆☆☆
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飛ぶ劇場は北九州で活動を続ける劇団。主宰の泊篤志は「IRON」で1999年の岸田戯曲賞の候補となっている。
舞台は劇場中央を分断する形で設置されている。細長い、ファッションショーの舞台のような形。客席はその両側に、舞台に平行して設置されている。舞台美術は中央部に細長い「棺」が置かれているだけのシンプルなもの。
役者は舞台に上っていないときは、舞台横、客席の前に待機する。待機中の役者は黒いフードのあるマントをかぶる。このマントは中世のクリュニー会修道士風のデザイン。この舞台両脇にいるときには、役者たちはいっせいに説明的せりふを朗読したり、あるいは舞台に出ている人物紹介などト書き的内容の語り手となる。
作家の泊篤志は元ゲーム作家だったらしい。ちらし裏に転載されている劇評の記載では、ト書きを読み上げるスタイルやその内容、「使徒」によって外部の人間が街中を案内される場面にRPGの影響を指摘している。いわれてみればなるほどという感じ。

こうした仕掛け部分の創意は面白かったのだが、閉鎖的宗教カルトのコミュニティの頽廃という設定が陳腐。あらゆるフィクションの想像力を超えた異常性を示したオウム事件を知っているわれわれは、こういった設定にはよっぽどの仕掛けがないかぎり驚きを感じなくなってしまっているのだ。「正しい街」も設定の陳腐さにひきずられてしまっていて、観客の想像力を開くような仕掛けを提示できていないように僕は思った。すべてが予定調和。この設定で創造性のある表現を作り出すのはもはやきわめて困難であるように僕には思える。
各登場人物の造形も平板で緻密さに欠ける。そしてそれらを演じる役者たちの演技も魅力に乏しい。中途半端に類型的で写実的。
いまひとつ。