閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

はだかの王様

http://www.shiki.gr.jp/applause/hadaka/index.html
劇団四季

  • 原作:ハンス・アンデルセン
  • 台本:寺山修司
  • 構成・演出:浅利慶太
  • 作曲:三木たかし,いずみたく,宮川彬良
  • 振付:謝珠栄,篠井世津子
  • 照明:紫藤正樹
  • 装置:高橋朋子
  • 衣裳:中村祐妃子,大石若草子
  • 出演:川口雄二,木村仁美,味方隆司,大橋伸予,小川美緒,玉城任,立岡晃,神保幸由,丹下博喜,石塚智子,江上健二,菅本烈子,倉斗絢子,赤瀬賢二
  • 上演時間:約二時間一〇分(休憩一五分含む)
  • 劇場:浜松町 自由劇場
  • 評価:☆☆☆★
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寺山修司台本ということでかなり期待していた舞台.六歳の娘といっしょに見に行く.
冒頭部で王様に献上されたのは喪服で,その喪服を見せびらかすために,猫の葬式を盛大に行うという部分に寺山っぽさを一番感じたが,全体に王様の「服」についての皮肉なメッセージが強調されていたように思った.
最初に幕外での口上役二人による導入がとても魅力的だった.観客に歌をうまく歌わせ(音楽は名曲ぞろい.特にこの冒頭で観客に一部を歌わせる《幕をあける歌》(いずみたく作曲)と,終幕での《王様ははだかだ》(いずみたく作曲)は,シンプルで,耳によく残る名曲だと思った),徐々に開幕の雰囲気をもりあげていき,群舞と合唱による華やかなオープニングの場面につなげていく進行は見事だった.終幕部も群舞と合唱で終わる高揚感に満ちた演出だった.舞踊は運動性に富んだ古典バレエ的な群舞を効果的に取り入れていて見応えがある.
本筋に入ってからの進行が重く,二時間の上演時間が冗長に感じられた.各役柄の類型の作り込みには大きな不満を覚える.特に道化役のアロハ大臣は,うまくやれば舞台の空気を一変させ,観客の人気を一気に集めてしまうようなコミカルなキャラクターであるにもかかわらず,今ひとつのりが悪い.劇団四季風の異様な台詞回しは仕方ないことだとはいえ,いまだ慣れず違和感を感じる.
浅利慶太以外の演出で見てみたい作品だと思った.

「はだかの王様」は久々に見ると,大人の僕にも依然苦い後味を残す寓話であった.周囲に流されず,自分自身の目で見て判断することは,年をとっても本当に難しい.