劇団四季
http://www.shiki.gr.jp/applause/trojan/
- 作:ジャン・ジロドゥ
- 訳:諏訪正
- 演出:浅利慶太
- 装置:金森馨
- 照明:吉井澄雄
- 音楽:武満徹
- 美術監修:土屋茂昭
- 衣裳:大石若草子
- 出演:坂本里咲、野村玲子、都築香弥子、阿久津陽一郎、味方隆司、山口嘉三、栗原英雄、田邊真也
- 上演時間:2時間55分(休憩20分)
- 劇場:浜松町 四季自由劇場
- 評価:☆☆★
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トロイア戦争開戦前夜、神々がこの国家に課した残酷な運命に抗し、驚異的な忍耐力と言葉による説得によって戦争を必死に回避しようとするトロイアの将軍、エクトールの姿を描く。戯曲が書かれた1935年、第二次世界大戦開戦前の世界の様相に古代の伝説的史実が重ねられている。
豊かな言葉の連なりによって緻密に構成されたいかにもフランス演劇らしい「ことばの演劇」だった。
劇団四季のストレートプレイでは、四季独自の演技様式にいまだ慣れ親しむことができない。朗々とした発声と大仰で記号的な身体表現は確かに戯曲のことばの内容は明瞭に伝えるものである。しかし登場人物の個性はあの均質的な演技によって平板化し、舞台は単調な朗読会めいたものになってしまう。朗読にしてもあの読み方はあまりに陰影に乏しく、朗唱としての美しさも僕は感じることができない。役者は台詞をしゃべるぜんまい仕掛けの人形のようだ。もっともあの強烈な様式感をしっかりと取り込んだ上で、個性的な表現を作り出している達者な役者もいるのだけれど。オリジナルのテクストから感じられる対話のやりとりの軽妙さは、四季の舞台ではまったくはぎとられている。どの役柄の発声も同じ調子。
2時間50分のうち、50分ぐらいは眠ってしまった。
金森馨の象徴的な美術(特に第一幕の巨大な足)は圧巻だった。そしてニュアンスに富む照明が作り出す変化もすばらしい。役者の記号的振る舞いは、壮大で重厚なスペクタクルといかにもアンバランスな感じがした。ヘクトール役の阿久津陽一郎の姿はとても美しく力強かったけれど。武満徹の音楽は暗すぎるし、使い方のせいで安っぽく聞こえた。