劇団四季
http://www.shiki.gr.jp/applause/ardele/index.html
- 作:ジャン・アヌイ
- 訳:諏訪正
- 演出:浅利慶太
- キャスト:
将軍 志村 要
将軍夫人 斉藤昭子
伯爵(将軍の義弟) 味方隆司
伯爵夫人(将軍の妹) 野村玲子
男爵(伯爵夫人の恋人) 栗原英雄
ニコラ(将軍の二男) 田邊真也
ナタリー(将軍の長男の妻) 木村花代
アダ(女中・将軍の情婦) 団こと葉
アルデールの恋人 高橋征郎(劇団民藝)
- 劇場:浜松町 自由劇場
- 上演時間:2時間(休憩15分)
- 評価:☆☆☆☆
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1956年の四季の旗揚げ公演のときの上演演目だそうだ.二十世紀フランス演劇を代表する劇作家であるアヌイの作品をいま日本で上演してくれるのは四季ぐらいのもの.ミュージカルでがんがん儲けつつも,ジロドゥ,アヌイという演目も細々ながら上演を続けてくれているのはありがたいことだなあと思う.他の団体でもとりあげてくれればよいのに.
全然期待していなかったのだが,思いのほか面白かった.やっぱ大作家と言われるひとはつまらない戯曲を書かない.前半は状況の説明がやたらと多くて,古い芝居だなという感じでなかなか乗れないのだけれど.
とある避暑地のブルジョワの別荘が舞台.登場人物のほとんどが不倫関係にあるというブールヴァール劇的設定のなか,物語は喜劇的に展開していく.しかしブールヴァール劇みたいだなあと思ってみていたら,最後に急転がある.結末は虚無的で皮肉がきいたものだった.ブルジョワの家庭のなかで,独身のまま聖女のようにひっそりと静かに暮らしてきたせむしの長女アルデールの初めての恋愛(相手はせむしのラテン語家庭教師)が,一族の人間関係、そして恋愛につきものの欺瞞を少しずつ照らし出していくというお話だった.
大きく口をあけて,確実に一音一音明瞭に発音する四季の台詞術にはいまだ大きな違和感を覚える.台詞の微妙なニュアンスが消えて,のっぺらぼうの芝居になり,味気ないことこの上ない.でも日本語の表現としてはいささか不自然な修辞的な長台詞が多いフランス翻訳劇などは,下手に役者に解釈を託し未消化の芝居をさせてしまうより,役者を人形のごとくメカニックに動かし,発声も定型化してしまったほうが,まだよい結果が得ることができる,ということなのかもしれない.
浅利夫人の野村玲子,40代半ばだと思うけれど,あのプロポーションの美しさは驚嘆ものだ。ロングドレスがとてもよく似合っていた。