閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

双生児 The Separation

クリストファー・プリースト Christopher Priest/古沢嘉通訳(早川書房、2007年)
双生児 (プラチナ・ファンタジイ)
評価:☆☆☆☆

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第二次世界大戦を舞台とする「もう一つの歴史」もの。ちょっとしたきっかけによって分離していく双生児の運命とその双生児のそれぞれがかかわることになった第二次世界大戦の行く末が交錯し、「もしも」の世界が精密に描かれる。スリリングな展開でどんどんページを捲らせる娯楽小説ではあるが、凝った仕掛けで読者を惑わせる小説でもある。丁寧に読みすすめたつもりだったのだが、大森望氏の解説を最後に読んで、この小説の読書の前提となる第二次世界大戦における「歴史的事実」について自分が全く無知であったために、大きな読み違いをしてたことに気づく。読んでいてひっかかってはいたのだけれど、「何かヘンだな」と思いつつ、本文の記述を素朴に信じてしまったために、最後のほうでだいぶ混乱してしまったのだ。もっとも混乱してわけがわからなくなっても面白い小説ではあったのだけど。
SF的なアイディアで書かれた、知的な本格的ミステリー。もう一度じっくり読んでみたい。