加藤健一事務所 vol.68
http://homepage2.nifty.com/katoken/68index2.htm
- 作:マイケル・ヒーリー
- 訳:小田島恒志
- 演出:鵜山仁
- 美術:石井強司
- 照明:五十嵐正夫
- 音響:松本昭
- 衣裳:竹原典子
- 出演:加藤健一,新井康弘,山本芳樹(Studio Life)
- 劇場:下北沢 本多劇場
- 上演時間:2時間(休憩15分)
- 満足度:☆☆☆★
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
カナダのとある農場で中年男が二人暮らしをしている.そのうち一人は短期記憶力に障害がある.
この二人の農場に都会から若い青年がやってくる.農場を舞台にした演劇作品制作の取材のために農家に居候させて欲しいという.
二人はこの来訪者を受け入れるが,この若者の存在が何十年もの間安定した二人の関係をゆさぶるようになる.
記憶に関わる物語はあまたあるし,その仕掛けの核として記憶障害が用いられてる作品は少なくないはずだ.
「思い出のすきまに」はそうした「記憶もの」の佳篇で,一幕で提示された伏線が二幕で徐々に回収されていく仕掛けになっている.記憶障害の男にそのパートナーが毎晩のように聞かせる彼ら二人の過去にまつわる物語を語る場面はとても美しく,感動的だ.この場面は一幕の最後のほうに置かれている.この話の謎の核は,いくら幼なじみの親友同士とはいえ,どうして二人は長年にわたって共同生活を続けてこれたのか,ということである.この二人に同性愛的な雰囲気はまったく感じられない.
その謎解きは二幕でなされるのだけれども,その説明が今一つ弱い.二幕で明らかにされる真相に意外性が乏しく,一幕のサスペンスが尻すぼみになってしまった感じがあった.
照明,演出,役者の演技など公演に関わる要素の全般的なクオリティは高く,戯曲自体の出来もそれほど悪くはないのだけれど,意外性のあるドラマに乏しい平板で地味な印象の作品だった.主要登場人物がカナダの農夫の二人組というのも感情移入しにくいところ.
いい話ではあったが物足りなさを感じる.