閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

Chotto Dake YOn

快快 だらだら家公演
http://www.faifai.tv/chotto.html

  • 会場:下井草 右側二軒目
  • 評価:☆☆☆☆
                                                                            • -

ex小指値、快快による各回限定10名のイベント公演。僕が行った会(6/1、20時)には、ゲストDJとして初音映莉子ちゃんが来ていた。
西武新宿線の下井草駅から歩いて5分ぐらいのところにある平屋の一軒家での公演。同じタイプの平屋が3,4軒並んでいるうちの一軒で普通のかなり古ぼけた民家だ。靴を脱いで入場する。昼の公演で騒ぎすぎたため近隣住民に通報され、警察の取調べをうけたとのことで、小さな声で静かにすごすよう注意される。
畳敷きの6畳がメイン会場でそこには快快のメンバーがだらっとした感じでいる。6畳間の横には小さなDJコーナーがあって、初音映莉子ちゃんが座っていた。彼女は6畳の人の輪には入らず、基本的にはそこでCDをいじっていた。6畳間の古ぼけたテレビからは快快の過去の公演の様子が流れている。

どんな感じの「公演」なのかはまったく予測がつかなった。とりあえずはテレビの画像をぼんやり見ながら、快快の可愛らしい女の子たちと雑談をする。どういうふうに振舞うものかわからなくて中年男の僕はなんとなく居心地がよくなかったのだけれど、メンバーは気さくに話しかけてきてとても感じがいい。メンバーの一人が作る料理(タイ風グリーンカレー500円など)がとてもおいしい。とりとめもなく40分ほど過ぎる。
若くて可愛らしい女性と話すのは楽しいのだけれど、うーん、家「公演」ってこんな感じで終わっちゃうのかな、ちょっと微妙だなと思っていると、「さあ、それじゃそろそろはじめよっか!」というメンバー一人の音頭とりがあって、快快メンバーによる宴会芸の披露がはじまる。
切り絵、目隠し怪談(怖くて面白い)、びっくり便所(便所に入ってあたりをきょろきょろ見回すと、怖いものが見られる)など一通り終わると、誰も芸をするものがいなくなり、雑談も滞り、ぎごちない空気が停滞する。
快快メンバーの一人が、これまで奥にいたままで6畳間にも入ってこなかったメンバーに、こっちに入ってきて何か芸をするように言う。しかし言われた彼女は拒否。快快メンバーの一人が数日前に車をぶつけてしまい、その事故処理のお金のことが気になって、宴会芸どころじゃないと言うのだ。それに対してまた別のメンバーが、彼女の態度を批判する。不穏な空気が流れる。批判されたメンバーとそのほかのメンバーの間で口論が始まり、「まいったなぁ」と思った瞬間、とっくみあいが始まる。おもわず「おいおい、落ち着いてよ」と声をかける。DJ席にいた初音映莉子ちゃんは、こわばった笑顔で「ちょっっと〜、何してるのよ」と言う。部屋の電気が消され、とっくみあいの状態のまま、全員が固まる。メンバーの一人が携帯でだれかに電話をかけ、事態の様子を報告している。「うんうん、だからパンツ売ればってこと。だめだよ、パンツなんか買ってくれないよ。。。。ありがとう、ちょっとだけだったら助けてくれるのね」などというやりとりが聞こえる。
うーん、このけんか騒ぎが「お芝居」だったのだ。ある種のどっきりカメラ。何日か前にメンバーが乗っていた車が事故を起こし、損害賠償を請求されているというのは事実なのだそうだ。そういった話を、DJタイムの雑談のときにも聞いていた気がする。うーん、すっかりだまされてしまった。まいった、まいった。
この後は、全員で輪になってドリフのテーマに乗せて輪舞で占める。輪舞のあとは、だらだら雑談をしながら、自然に解散。

すっかりやらちゃったなぁ、という感じ。いかにも自然な雰囲気の中での、計算された公演だったのだ。虚構と現実の境目をぐらぐらと激しく揺さぶられる。しかもとっても親密で楽しい雰囲気の中で。何日か前に起こった偶発的不幸を柔軟に仕掛けとしてとりいれ、お芝居として成立させてしまう手腕に感嘆してしまう。あっさりそれに乗っかってしまう自分がちょっと情けない感じもするのだけれど。ホスピタリティに満ちたsympathiqueな参加型演劇公演だった。