閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ハナノミチ

青年団国際演劇交流プロジェクト2008
http://www.seinendan.org/jpn/info/index.html

  • 作・演出:ヤン・アレグレ Yan Allegret
  • 翻訳:藤井慎太郎
  • 照明:シリル・ルクレーク 西本彩
  • 映像・美術:ジュディス・ボーディネット
  • 音響:ファブリス・プランケット
  • 出演:安倍健太郎、川隅奈保子、工藤倫子、熊谷祐子、多田淳之介(東京デスロック)、鄭亜美、兵藤公美
  • 上演時間:110分
  • 劇場:こまばアゴラ劇場
  • 評価:☆☆
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評価の☆は役者の熱演ぶりに。
2006年夏に日本にはじめてやって来たフランス人が、ことばのわからぬ異国の安宿でさびしい気分になった。そんなさびしい気分の中で湧き上がった妄想をモノローグ・ドラマの形にしたもの、だと思う。観念的な日本の心象風景が、10の場によって描き出される。横長の舞台は、模造紙で覆われている。背景には小さな引き戸があって、その向こう側は洗面所になっているようだ。
芝居というよりは、かなりひとりよがりな内容の「ポエム」を複数の役者のパフォーマンスつきで朗読したといった感じの舞台。墨でおそらく即興的に思いつくまま、言葉を模造紙や役者の身体に書き込むというアイディア(お経っぽい朗読と暗めの照明とあいまって「耳無し芳一」みたいだ)、60年代の関西の前衛美術グループ「具体」のアクション・ペインティングを想起させる派手な「紙破り」と紙を盛大にくしゃくしゃにして、その中に人がくるまってしまう、といった行為は面白かったのだけれど、朗読される「ポエム」の言葉が貧弱で陳腐なのに辟易してしまう。
墨と筆文字で「和風」という安易なセンスはともかく、「孤独」「空虚」「虚無」といったことばが、そのままの意味で芸もなく並べられる、あきれ返るほどの紋切り型表現を平然と2時間弱にわたってくりかえす鈍感さにうんざりする。本当に「まじめに」やっているのだろうか、あるいは何かの冗談のつもりなのか、あの壮絶な凡庸な言葉の連なりは? 陳腐な言葉の羅列を二時間弱にわたって、冷房のほとんど効かない部屋で、密集した状態で座らされたまま聞くのはちょっとした拷問だった。せめて休憩があれば、途中で帰ったのに。アゴラ劇場なので途中退場もままならない。